マイキーとドクロ団の秘密 17

ハッピーを目の前に人間は銃を垂れたまま固まっていた。一連の起こった出来事に脳の処理が追いついていなかった。そして今一匹の猫に思いっきりメンチをきられている。さらにハッピーはひとしきり顔を見たあとゆっくりと動き地面に向いた銃口に自ら額をあてこう言った。

「さあ。撃ちなさいよ。アンタが引き金を引く瞬間にアンタの目ん玉くり抜いてやるから」

もちろん人間には何を言っているかは分からない。しかしその銃口を額に当てるという異常な行動と凄みのある鳴き声で人間は尻込み膝はガクガクと震えていた。

「アンタ達の顔は覚えた。この町の者じゃあないね、東の街から来たのか、、、まぁいいさ、とにかく次また顔を見たら容赦しないからね、覚悟しな」

ハッピーは怯えて逃げて行く人間達を見届けてから巨大イノシシの位置を確認した。

イノシシはもう突進をやめており遠くから子と一緒にこちらを見ている。どうやら気分が落ち着いたらしい。やれやれ、と元の目的である神殿に向かおうとすると「クォーーーン」と鳴き声がし、ハッピーが振り返るともう親子は何処かへ消えていた。

「ふーもう見つかるんじぁあないよ。ま、見つかったところでそうそうヤラれはしないんだろうけど、、」

ハッピーは再び前を向き神殿へと走り出した。

 

その頃。マイキー達は神殿を調べていた。外周には誰もおらずマイキーは「やっぱり」と思っていたが他の二人はあれ?中にいるのかな。おかしいな。などと言っていた。そしていざ中に入ってみるがやはり誰もいなかった。

「あれーー。誰もいない。もうみんな帰っちゃったのかなぁ、屋根も直ってるみたいだし」

誰もいない広い空間にコリンの声が響いた。

この森の神殿はマイキー達の祖先が建てたと言われているが詳しい記録、文書は残っていない。自然を司る神様が祀られており収穫祭の時町の皆でここに来る。感謝の祈りを捧げ、新しい稲や野菜を供え、夜通し火を焚き絶やさぬよう交代で番をする。酒は飲むが演奏したり踊ったりはせず、空や風、森や水と対話するような静かな祭りであった。マイキー達はその時以外殆どこの場所には来ないので、神殿の中を隅々まで観察するのは初めてだった。

「誰もいない。それに作業をした形跡もないわ」

エミコは天井を見上げ訝しげな顔をした。マイキーは神殿の中を調べながら何故マギーが嘘を教えたのかを考えていた。そう。そうだ、町に人がいない本当の理由を知っているからこそ、こんな嘘をついたのではないか。マギーだけ(他にもいたかもしれない)が町に残っていたのも引っかかる。疑問は尽きないがおそらくここまでの自分の考えは正しい。マイキーはそう思っていたがまだ二人、特にエミコには話すわけにはいかなかった。

その時、入り口の方で物音がした。