2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ちょっと月まで。-約束編 光 -

「すべてを理解する者?」 彼は数学教師の打った文章を読み終わった直後、文章の意味が理解できず、フリーズしていた。 世界から音が消え、この画面の中の文字達がまるで意味の無い図形として彼の脳内を駆け巡っていた。 そして急に雨の音が大きくなり耳をつ…

ちょっと月まで。- 約束編 雨 -

その日は雨が降っていた。 最後の授業を終え帰り支度をしていると教師が彼の側に来た。 「少し質問したい事があるから、放課後職員室へ来なさい」 そう言い放つと返事も聞かず立ち去っていった。 彼には何も思い当たる節がなく不思議に思ったが、無視するわ…

ちょっと月まで。- 約束編 序 -

南方宗介には約束があった。 彼はごく普通の一般家庭に生まれ、特筆するような出来事もなく幼少期を過ごした。 というのは彼が意図的に造り出した「印象」であり、実際はその真逆であった。 彼は紛れもない天才であった。 彼自身がそう自覚したのは4歳の時で…

ちょっと月まで。- 天才編 -

月旅行が庶民の娯楽の一部となってもうだいぶ経つ。 身体と精神を分離して、精神だけを機械に入れて行くなんて気持ちが悪い。なんて言う人もほとんどいなくなり、いまでは代理店から二泊三日のツアーなんていうのも組まれている。 人類の進歩とはまさに日進…

ちょっと月まで。- LOVE編 -

私には学がない。謙遜ではなくマジで阿呆である。 勉強が嫌いだし、知識を記憶に留めておこうとするのは凄く疲れる。 しかし、好奇心はあるので、色々な事に興味が湧く。 そこで私が使うのが想像力である。 知識が無いので想像で解決してみる。解決とまでは…

ちょっと月まで。-移動編-

月までの移動手段についてだが、前回のカラダ編で肉体の問題は解決しているので、正味の話あとはもう簡単である。 何故ならおそらくあの立派な宇宙船は人の肉体が壊れないよう厳重強固に作られているのであって精神だけとなった僕らには最早必要ない機能であ…

ちょっと月まで。-カラダ編-

人は月にすら満足に行けない。 たった38万kmしかないのに。 理由は予算だと思うが、では何故金がかかるか、それはやはり宇宙空間が過酷だからだろう。 ペラペラの鉄板を貼った飛行機では駄目だし、外に出るのも凄く動きにくそうな分厚い服を着なくてはいけな…

宇宙の端っこ。の壁。

疲れていると宇宙について考えたり想像したりする事が多い。 生存本能が働き現実逃避しているのだろう。 しかしね、ほんとに、宇宙の先端ってどうなっているの? 昔、地球は平たんで端は大きな滝になっており地面の下は巨大な象が支えていると考えられていた…

現実逃。飛行。

この宇宙が始まった瞬間から世界は悲しみで埋め尽くされた。 何故なら時の経過が不可逆で誕生は必ず死へと向かうからだ。宇宙は様々な代謝を繰り広げる舞台で、キャスティングされた僕らは降りることはできない。 生命とはいったいなんなんだろう。 石、水、…

自由な人生

過酷な環境で作ろうが、快適な環境で作ろうが、受け手には同じひとつの作品である。 突然だが芸術の話である。 良いか悪いか。好きか嫌いか。それ以上でも以下でもない。それが音楽、絵画などの魅力であると私は思う。 よって制作過程で生まれた「物語」はそ…

偽死亡引退制度

著名人がもう一度一般人として生活する為に、偽死亡引退という制度がある。ある一定の信頼とまとまったお金を払えば専門の代理人が動き出す。マスコミの情報操作、世論の誘導、住民票など書類の整理、また場合によっては家族や親族をも欺く。 普通に引退しま…

夢を見た

夢を見た。薄暗い中歩いていると女に「そのフライパンを貸して欲しい私のでは焼けない」と言われたので、あぁまぁどうぞと手にしていたフライパンを渡した。すると女は焼きもせず、すたすたと歩いていってしまう。呼び止めようと声をかけても、振り向きもせ…