マイキーとドクロ団の秘密 15

一方その頃。

ハッピーは北ゲートを抜け森の中にいた。神殿にはきっと罠があるとマイキー達に伝えるため急いで後を追ってきたのだ。しかし今ハッピーは神殿に向かう事が出来ずにいた。なぜなら目の前に行く手を阻む大きな黒い固まりが立ちはだかっているからである。

それは巨大なイノシシであった。

「ンゴッンゴッンゴッ」

荒い息づかいがその者の怒りを物語っている。傍に直径50cm程の倒木があったが、これはこのイノシシの突進により一撃でへし折られたものであった。

「ふー今日は変なのによく出会う。人間達はこういう日の事厄日って言うらしよ。アンタに言ってもわからんだろうけど」

ハッピーは森に入りマイキー達に追いつくため急いでいたのだが途中イノシシの子が地面の上に隆起した木の根に絡まりもがいているのを見つけた。放っておこうかと思ったのだが根の細い所を2,3ヶ所噛み切れば抜け出せそうだったので、なんとなく助けてやろうと近づいたのが運の尽きであった。子を守ろうとする親イノシシが問答無用で突進してきたのである。地震かと思うほどの地鳴りがしたおかげで、気付くのが早く避ける事ができたが、もしあの突進に巻き込まれたら、いやかすっただけでも致命傷であっただろう。ハッピーはゾッとしながらも体勢を立て直し一応話しかけてみたのだった。

「いや。アタシは、、あのー、、この子を助けようと思って、、んー。思いまして。なんというか、、。そうだ。そう。これだ、、あのぉ、アタシもう行きますね?急いでるので。いいですかね。あなたの横、今から通りますね?ごめんあそばせって感じで。え?ダメ?ダメな感じですか、、。ですよね。、、ハァ、、、、、」

深い深い溜め息をつき、自分のお人好し加減に腹を立てたが、そんな自分が好き。と言うより、実際はそんなに安っぽいものではなく彼女が利他的行動を選択するのは彼女の生命、生命の輝き、尊厳、意味、そして美、が集結し結晶となった様な精神性、すなわちアイデンティティなのであった。しかしどうしたものか。ハッピーは考えた。選択肢は三つ。

①相手を倒してから神殿に向かう

②この場から一旦逃げ周り道をして神殿に向かう

③全てを諦め何もしない

んー。まあ、、②が妥当だろう。一人納得したハッピーは相手への警戒も怠らず逃げるルートを探した。イノシシは相変わらずいきり立っている。その時遠くの方で人の声がした。