マイキーとドクロ団の秘密 6

金曜日 am8:47 晴れ

今日も一日が始まった。コリンとコリンパパを送り出し後片付けの済んだママがコーヒーを飲みながら一息つきだす頃、ハッピーはキッチンに用意された自分の朝食を食べに二階から優雅に降りてきた。

「あらハッピーおはよう」

そう言ってママはコーヒーカップに手を掛けた。

「おはようママ今日もいい天気ね」

ハッピーとコリンママの関係は良好である。ハッピーは基本的に人間嫌いだが、本人の人格(本猫の猫格)は高貴な為、世話をしてくれる人間に義理欠くような事はなかった。ママはママで必要以上に触ったりかまったりしないのでハッピーにとっても心地よい距離感を保っていた。

それにママは強く賢い女性であった。

am9:26

ハッピーは朝食を終えるといつも二階のコリンの姉の部屋に行き窓のそばで日向ぼっこをする。時折り薄目を開けて下の通りを見たり遠くの森を見たりする。そして微睡みかけると決まって昔の野良猫だった頃を思い出し、凶暴を隠しもせず刃剥き出しで闊歩する愚かな自分に辟易するのであった。無駄に沢山のものを傷つけたと。しかし今はそうではない何も傷つける必要はない。毎日ご飯を用意してもらいそれを食し、歩き少しだけ考えてそして寝る。それで良いのだ。生命らしい合理的な一日だ。今日も、、きっと、、。

、、、、。

ガタッ!!

「あ〜れ〜」

眠りかけたその時階下で大きな音と共にママの声がした。ビクッと身体を瞬時に緊張させ周りの状況を正確に読み取ろうと立ち上がった。およそ0.5秒ハッピーは物音と声そして空気の匂いから状況を察し素早くそして静かに階下に降り今まさに黒いマントを羽織った二人組にママが連れ去られようとしているのを見た。

何だ?あの私達は悪役ですと言わんばかりのアホな衣装はそしてママ、あ〜れ〜。じゃあないのよ。漫画じゃあないんだから。うわ。玄関から堂々と入って来たのか。何処も壊されてない物取りじゃない。ママが狙い?何のために?ああいい天気だな。いやそれよりどうする噛みついたところで二人は倒せない。道具。火。仲間。違う。間に合わない。アレ男か?多分そうだ。ああ蝶々だ!追いかけたい。くそっどうする。仕方ないとりあえず。

「まちなこのクズ野郎共!」

ハッピーは叫びながらママを抱えている後ろの奴に飛びかかりマントを腰の辺りから引き裂いた。そしてサッと反復横跳びの要領で横に飛び退きそのまま力を蓄えた後ろ足で床を蹴り相手のくるぶしに噛みついた。

「あっ!ぎゃーーー!痛ーーー!」

黒マントは何が起こったのかわからぬまま足に激痛が走ったので抱えていたママの足の方を落とした。前の黒マントが急に重心が変わったのでママの上半身を落としそうになるが力を入れ耐えた。

「バカ急に離すな!」

と後ろを振り返った瞬間ハッピーは噛み付いていた足を離し前の奴の顔めがけて飛びかかる。

「この愚鈍野郎!遅いよ!」

ぎゃりっ。と爪が擦れる音がして前の奴がのけぞった。がしかしダメージは無い。

「ちっ。マスクか。」

飛びかかり着地した足で階段に逃げたハッピーは相手の顔を見た。ドクロの形のマスクに爪の痕が残っている。

「何なんだいったい。おい!早く足を持てずらかるぞ」

前が後ろに言いクソッと言いながら立ち上がって出て行こうとした。こうなってはもうハッピーに出来る事はない。

「ちっ仕方ないか。とりあえず一矢は報いた。ママゴメンよアタシにはこれ以上は、、、」

そう思った矢先後ろから首を捕まれ持ち上げられた。そして鼻の前に何やら液体の入った試験管を近づけられたと思ったところで記憶が途絶えた。