マイキーとドクロ団の秘密 5

 

「静かね」

エミコが呟いた。そう、静かだった。否静かすぎた。決して大きな町ではないが金曜日の昼下がり通りに誰もいないどころか、声ひとつしない。物音も車の音も、、、。

「そういえば私達帰ってきてから誰か見た?誰ともすれ違わないし、見てもない気がする」

エミコは窓の方へ行き開いて通りを見渡した。

風がエミコの長い髪を撫でメイン通りの方へ去っていく。遠くで森が鳴いている。

「やっぱり。おかしいわ誰もいないなんて」

マイキーは黙って外を見ていたが急に駆け出し部屋を飛び出していった。

「マイキー」

コリンが背中に声をかけるが止まらない。

エミコがいる窓からマイキーが自分の家に飛び込むのが見えた。

この後コリンとエミコはマイキーを追いかけ合流しマイキーの部屋で同じドクロマークの紙を見つけるのだが、その前に此処に明記しておくべき事がある。

前回登場したハッピーという猫だが、実は人の言葉を完全に理解する天才猫であるという事だ。

彼女(メスネコである)は小さい時から人の言葉が分かり、それが異常である事を理解していた。これは彼女にとってアンラッキーだったといえるだろう。世の中知らない方がいい事の方が圧倒的に多い。

しかし時には役立つ事もあった。まだ野良猫として町を徘徊していた時には酷い虐待をする人間など言動から察知し距離を置けたし、逆に友好的な人間には甘えたふりをし食料を調達できた。ただ生命維持の効率上飼い猫となり人間社会を知れば知るほど何と理不尽で愚かで非効率な生物だろうと思う様になり、その馬鹿さ加減を見る度それが彼女のストレスとなっていた。ただし、ひとつだけ人間の中で好きなものがある。それは顔のハンサムな男性、所謂イケメンであった。これは理屈ではなく本能であり彼女にも説明する事は出来ない。それは雄猫と子孫を残す残さないという生命的な事とは違い、釣りが好き車が好きなどに近い趣味嗜好的感情である。

この人間は好まないがイケメンは好きというジレンマも彼女のストレスの一部であり、複雑だがこの矛盾を自分に与える人間が憎いという極めて利己的、屈折した猫であった。

さて、ハッピーの紹介が済んだところで、少し時間を戻そう。マイキー達がコリンの家に来る前一体何があったのか。

きっとハッピーは全てを見ている。