マイキーとドクロ団の秘密 10
エミコの家は北ゲートのすぐ側にあり屋上からは町の北に広がる広大な森が一望出来た。この森は神聖とされ中央付近にある小さな泉のほとりには石造りの神殿が建てられている。中は装飾品などは一切無くがらんとした箱で奥の壁面に自然を司る神の像が祀られているだけであった。普段は誰も立ち寄らないが年に一度秋の収穫祭の時町の皆で祈りを捧げに行く。
さらに北の山々から降りてくる澄んだ風が森の英気を運び町をいつも清浄に保ってるといういう古い言い伝えがあり、歴史上この町と自然とは密接な関係にある事が分かる。この町の約半分を占める畑や田園も大切に守られており年寄りなどは昔はもっといい野菜が育ったなどと言っているが、他に比べればここの作物は今でも格別に新鮮で、近隣では有名な事であった。
さて、マイキー達であるがエミコの家に行く事に加え、町の様子を見るという目的もあるため路地を北に行く最短ルートではなく一度メイン通りに出てから西へ向かうルートをとった。まさかそんな筈はない。映画やドラマじゃないんだから。そんな淡い期待をいとも容易く裏切る様に町は静まりかえっていた。
「誰も、、いないね。」
メイン通りにでてからしばらく歩いたが誰とも合わない。それに立ち並ぶ店も外から覗き込んでみたが客はおろか店主すら見当たらない。マイキーはある程度予想はしていたとはいえ、ショックを隠しきれないでいた。他の二人も同じく口をきゅっと一文字に結び血の気の引いた様な顔をして目は虚ろであった。
「お母さん、、」
エミコがポツリと呟いた。自分の言葉で我に返ったエミコはいち早く家に帰り母親の安否を確かめたいと思い立ち急に駆け出した。
「エミコっ」
マイキーが呼び止めようとするが振り向きもせず駆けていく。
「コリン、追いかけよう。何があるか分からない、三人固まって行動した方が良いと思う」
コリンは黙って頷きマイキーと共にエミコの後を追って行った。
まるで心に纏わりついてくる不安と恐怖を振り払うかの様に、必死で。全力で駆けて行った。