マイキーとドクロ団の秘密 18

三人は思わず顔を見合わせた。誰か来たのか。いや、元々どこかに居たのか。それぞれの思惑を胸に入り口の方を見た。

そしてそこに現れたのは、、、

マギー。そして町でレストランを営むシェフドミニクだった。マイキーとエミコはギョッとしたがコリンは安堵の表情で話しかけた。

「あー!何処にいたの?探したよー。僕びっくりしちゃっただって来たら誰もいないんだもの。ねー他の人は?お母さん達もいるんでしょ?」

マギーはニコニコ笑いながら答えた。

「あーー勿論みんないるよ、修理が終わったからあっちで休んでるんだよ。さ、さおいで、連れて行ってあげるよ」

コリンは嬉々としてついて行こうとしたがエミコが後ろからお腹の肉をつまみ引き止めた。エミコもどうやら矛盾に気付いているようだ。

「あいたたた。なにするのさ、はやく行こうよ。あっちにお母さん達がいるって言ってるよ」

「マギーおばあちゃん、さっき足が痛いから町に残ってるって言ってたよね」

エミコが少し大きな声で言った。

「ああ。そうだよ。足が痛くてね。町に残ったんだよ」

マギーは優しい声だ。

「じゃあ何で作業が終わったとか、みんながあっちにいるとか知ってるの?」

「ん?そ、そりゃあ、、あれ、あれだよ。そう!今このドミニクに会ってね聞いたんだよ。ねっドミニク」

マギーの後ろにぬっと立っているドミニクを親指で差して言った。ドミニクは頷きもせずただ黙って立っている。入り口から差す逆光で表情が見えずその巨体も相まって不気味であった。

「ふーん。さっき。さっき何処で会ったの?道で?じゃドミニクさんはそこでなにしてたの?」

マイキーはエミコの後ろにいたが、話すエミコの肩が小刻みに震えているのを見ていた。それが怒りからくるものなのか悲しみからなのかはわからなかったがおそらく前者だろう。コリンの腹をつまんだ手に力が入ったようで「はうっ」と唸っていた。

「エミコどうしたんだい、やけに焦っているようだね、おばあちゃんの所へおいで頭を撫でてあげるから」

マギーはそう言って一歩近づいた。それに合わせてエミコは一歩さがる。

「さ、おいでぇ、エミコ、、いつもみたいにその綺麗な髪をいー子いー子してあげるよー」

また一歩近づき合わせてさがる。

エミコに引っ張られたコリンは「エミコどうしたのさ早く行こうよ」などと言っている。

マイキーはいざという時の逃げるルートを考えたが一つしかない入り口にあのドミニクがいる限りどうしようもない。採光窓は位置が高すぎる。そうしてる間にもマギーはじりじり近づいてきた。

「いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子いー子」

呪文を唱える様に言っている。マイキーが万事休すかと思った時入り口に立つドミニクの後ろにもう一つの影が見えた。

マイキーとドクロ団の秘密 17

ハッピーを目の前に人間は銃を垂れたまま固まっていた。一連の起こった出来事に脳の処理が追いついていなかった。そして今一匹の猫に思いっきりメンチをきられている。さらにハッピーはひとしきり顔を見たあとゆっくりと動き地面に向いた銃口に自ら額をあてこう言った。

「さあ。撃ちなさいよ。アンタが引き金を引く瞬間にアンタの目ん玉くり抜いてやるから」

もちろん人間には何を言っているかは分からない。しかしその銃口を額に当てるという異常な行動と凄みのある鳴き声で人間は尻込み膝はガクガクと震えていた。

「アンタ達の顔は覚えた。この町の者じゃあないね、東の街から来たのか、、、まぁいいさ、とにかく次また顔を見たら容赦しないからね、覚悟しな」

ハッピーは怯えて逃げて行く人間達を見届けてから巨大イノシシの位置を確認した。

イノシシはもう突進をやめており遠くから子と一緒にこちらを見ている。どうやら気分が落ち着いたらしい。やれやれ、と元の目的である神殿に向かおうとすると「クォーーーン」と鳴き声がし、ハッピーが振り返るともう親子は何処かへ消えていた。

「ふーもう見つかるんじぁあないよ。ま、見つかったところでそうそうヤラれはしないんだろうけど、、」

ハッピーは再び前を向き神殿へと走り出した。

 

その頃。マイキー達は神殿を調べていた。外周には誰もおらずマイキーは「やっぱり」と思っていたが他の二人はあれ?中にいるのかな。おかしいな。などと言っていた。そしていざ中に入ってみるがやはり誰もいなかった。

「あれーー。誰もいない。もうみんな帰っちゃったのかなぁ、屋根も直ってるみたいだし」

誰もいない広い空間にコリンの声が響いた。

この森の神殿はマイキー達の祖先が建てたと言われているが詳しい記録、文書は残っていない。自然を司る神様が祀られており収穫祭の時町の皆でここに来る。感謝の祈りを捧げ、新しい稲や野菜を供え、夜通し火を焚き絶やさぬよう交代で番をする。酒は飲むが演奏したり踊ったりはせず、空や風、森や水と対話するような静かな祭りであった。マイキー達はその時以外殆どこの場所には来ないので、神殿の中を隅々まで観察するのは初めてだった。

「誰もいない。それに作業をした形跡もないわ」

エミコは天井を見上げ訝しげな顔をした。マイキーは神殿の中を調べながら何故マギーが嘘を教えたのかを考えていた。そう。そうだ、町に人がいない本当の理由を知っているからこそ、こんな嘘をついたのではないか。マギーだけ(他にもいたかもしれない)が町に残っていたのも引っかかる。疑問は尽きないがおそらくここまでの自分の考えは正しい。マイキーはそう思っていたがまだ二人、特にエミコには話すわけにはいかなかった。

その時、入り口の方で物音がした。

 

 

 

 

 

 

 

マイキーとドクロ団の秘密 16

「あっちだあっちに行ったぞ」

人間の声、複数いるようだ。そしてこの台詞。ハッピーは人間の言葉が理解できる。嫌な予感がした。というよりほぼ確信に近かった。イノシシは気が立っていて気づいていない様だ。そして予感は的中した。イノシシの後方に猟銃を持った人間を三人確認する。密猟者だ。この巨大なイノシシが何故あんなにキレて突進してきたのかようやく合点がいった。出会う前にこの人間達と一戦交えていたのた。そして追われているところに子に近づくハッピーを見て怒り狂ったのであろう。

「ふんっ。なるほどね、アイツらのせいでアタシまで巻き添いくったのね」

ハッピーは木の陰に隠れようとしている人間達の位置を目視で確認し記憶した。そして

「作戦変更アイツら懲らしめないと気が済まないわ」

と呟き巨大イノシシに向かい全力で駆け出した。それを見たイノシシが後ろ足で砂を蹴り上げ迎え撃つ体勢をとる。ハッピーはそのまま走りあと数メートルというところで急速に右折した。それを見たイノシシハッピーの軌道を読み最短距離で跳ね飛ばそうと突進する。ほぼ同時に銃声イノシシが居た場所の地面に着弾「しくじった急に動き出した!」と人間の声ハッピーイノシシと衝突するポイントを目算し直前で一番近い木を駆け上がったそしててっぺん付近から人間達のいる方へ跳躍。何本かの木を経由して一気に間を詰める。イノシシは止まれずに幾つか木を薙ぎ倒し大きくカーブを描いてハッピーの行った先を向く。銃声と地鳴りで鳥達が一斉に飛び去っていく。人間がハッピーに気付く「猫?」遅い。反応が。人間が彼女を目視し脳に伝達した情報は猫という事だけ。状況を理解せぬまま窮地にいた。ハッピースピードを一切落とさず牙を剥き猟銃を持つ手を噛み切る。たまらず人間ギャッと唸り銃を落とし跪く間髪入れず後ろに回り込み首筋を爪で引っ掻いた。何が起こったかわからぬまま悶えているのを横目に見ながらハッピーは次の人間の元へ向かうそこに巨大イノシシが迫ってくる。人間大慌てで傍らの草むらに飛び込み九死に一生をえた。イノシシそのまま猟銃を轢き潰しまたハッピーを追う。二人目の股の下をくぐり抜け一瞬にして背後を奪う人間は最早成す術なくただよろけて今見た猫を探す。ハッピーその顔に飛びかかり瞼の上二箇所、右の頬、左の顎落下しながら順番に切り刻む。人間あぁあいぃゃぁと両手で顔面を押さえてあらぬ方向へ走り去り木の根に足を掛けそのまま木に頭を強打失神。ハッピー着地と同時に四肢で地面を蹴り三人目の方を向く。今度は少し距離がある。流石に異変に気づいてこちらへ銃口を向けている。ダァン!無闇に放った弾丸ハッピーから3mはズレている「ふっこの状況で銃は悪手でしょアタシが見えてんのかい!ニンゲンッ‼︎」避ける気も無く直進で向かい目の前1mで急停止した。そしてゆっくり人間の顔を見上げた。

 

マイキーとドクロ団の秘密 15

一方その頃。

ハッピーは北ゲートを抜け森の中にいた。神殿にはきっと罠があるとマイキー達に伝えるため急いで後を追ってきたのだ。しかし今ハッピーは神殿に向かう事が出来ずにいた。なぜなら目の前に行く手を阻む大きな黒い固まりが立ちはだかっているからである。

それは巨大なイノシシであった。

「ンゴッンゴッンゴッ」

荒い息づかいがその者の怒りを物語っている。傍に直径50cm程の倒木があったが、これはこのイノシシの突進により一撃でへし折られたものであった。

「ふー今日は変なのによく出会う。人間達はこういう日の事厄日って言うらしよ。アンタに言ってもわからんだろうけど」

ハッピーは森に入りマイキー達に追いつくため急いでいたのだが途中イノシシの子が地面の上に隆起した木の根に絡まりもがいているのを見つけた。放っておこうかと思ったのだが根の細い所を2,3ヶ所噛み切れば抜け出せそうだったので、なんとなく助けてやろうと近づいたのが運の尽きであった。子を守ろうとする親イノシシが問答無用で突進してきたのである。地震かと思うほどの地鳴りがしたおかげで、気付くのが早く避ける事ができたが、もしあの突進に巻き込まれたら、いやかすっただけでも致命傷であっただろう。ハッピーはゾッとしながらも体勢を立て直し一応話しかけてみたのだった。

「いや。アタシは、、あのー、、この子を助けようと思って、、んー。思いまして。なんというか、、。そうだ。そう。これだ、、あのぉ、アタシもう行きますね?急いでるので。いいですかね。あなたの横、今から通りますね?ごめんあそばせって感じで。え?ダメ?ダメな感じですか、、。ですよね。、、ハァ、、、、、」

深い深い溜め息をつき、自分のお人好し加減に腹を立てたが、そんな自分が好き。と言うより、実際はそんなに安っぽいものではなく彼女が利他的行動を選択するのは彼女の生命、生命の輝き、尊厳、意味、そして美、が集結し結晶となった様な精神性、すなわちアイデンティティなのであった。しかしどうしたものか。ハッピーは考えた。選択肢は三つ。

①相手を倒してから神殿に向かう

②この場から一旦逃げ周り道をして神殿に向かう

③全てを諦め何もしない

んー。まあ、、②が妥当だろう。一人納得したハッピーは相手への警戒も怠らず逃げるルートを探した。イノシシは相変わらずいきり立っている。その時遠くの方で人の声がした。

 

 

 

 

マイキーとドクロ団の秘密 14

エミコの家から神殿へ行くには北のゲートを抜けて森を歩かなくてはならない。この森は神聖とされ動植物を獲る事は禁じられている。神殿への道は一応わかる様にはなっているが基本的に人の手は入っておらず手摺りや明かりなどはもちろん舗装もされていないので、町の住人が無闇に近づくことはなかった。

「ふう僕ここ嫌いなんだよ。何故って凄くしんどいだろ。道はガタガタだし虫は出るし去年の収穫祭の時なんてこーんな大きなイノシシの親子が目の前を横切ったんだよ。んごっんごって無茶苦茶怖かったんだから」

町に人がいない理由が分かり安心したコリンは言いながらも顔は血色良く元気であった。

「またアンタ大袈裟に言ってる。こーんな大きなイノシシなんていないわよ。それじゃ軽トラックぐらいあるじゃない」

エミコもまた同じくコリンに言い返しながらも顔は朗らかであった。

二人は談笑しながら足取りも軽かったがマイキーは一人下を向き、歩きながらも何かを考えている様子であった。そしてぽつりぽつりと独り言を地面に落としていった。

「神殿、、補修、、屋根、、いない、、誰も、、空いた窓、、描きかけの漫画、、おばあちゃん、、マギーおばあちゃん、、足、、怪我、、、、」

「マイキー、、マイキー」

ふと気付くとエミコが心配そうに顔を覗き込んでいたのでマイキーは驚いた。

「わっ。ご、ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ」

「どんな?」

「いや、あの、、」

マイキーは自分が感じた矛盾。何だか全てが途中のまま時間が止まってしまったような町に感じた違和感を話そうか話すまいか考えたが二人を無闇に不安にさせることもないと思い、言うのをやめた。そして話を逸らした。

「イノシシ、、軽トラックぐらいの、、面白いなと思って、、」

「そうでしょ!おかしいわよ大きすぎよ」

エミコは言ってあははと声を出して笑った。

「ホント!ホントなんだってばー。んごっんごって言ってたんだよー」

コリンは「んごっ」の部分を先程よりリアルに演じた。

「あはは。アンタんごって強調すんのやめなさいよ笑っちゃうでしょ」

エミコは言いながら大声で笑った。それに被せてコリンが白目を剥きながらたたみかける。

「んごっ‼︎んごっ‼︎」

「いっいたいっお腹痛いーひっひっ」

エミコはお腹を押さえ大笑いした。

「んごっ‼︎んごっ‼︎」

「いーひー痛いーお腹ーやめて〜コリン」

次第に本当にお腹が痛くなりエミコはだんだん腹が立ってきた。

「んごっんごっんごっんごっんごっんごっ」

「いーいたいーやめて〜っっっって言ってるでしょ!コリンー!はぁぃやぁー!!!」

エミコはコリンのお尻に後ろ回し蹴りをお見舞いした。

コリンは「んごっーーーー‼︎」と白目を剥いたまま鼻をならし、海老反りになったまま三秒停止した。マイキーは女の子にしつこくするのはよそうと心に誓った。

そうこうしているうちにマイキー達は無事?神殿についた。

 

 

 

 

 

 

マイキーとドクロ団の秘密 13

「まちな」

ハッピーはマイキー達がエミコの家に向かう時から屋根伝いについて来ていたのだった。今まで受けた恩を仇で返すような猫では無い。当然コリンやママの安否を気遣っての行動である。

マギーは屋根から落ちて来た猫を見てギョッとした。

「あ!お、お前、、いや、ど、どうしたのかな?猫ちゃん、、どうちたんでちゅかねこちゃぁん」

「ふん。動揺してるね。無理もないアタシが分かるねバアさん」

ハッピーはゆっくり体勢を整え如何なる動きにも瞬時に反応できる狩の構えをとり、さらに続けた。

「そりゃ分かるよねあんなに酷く噛んでやったんだから」

マギーはグッと下唇を噛んだ。ハッピーが何を言っているかは分からないが、身体の動きと唸る様な鳴き声、それに異常に張り詰めた場の空気からこの猫がまた自分を攻撃しようとしていることは火を見るよりも明らかだった。それでもマギーは一応しらばっくれてみる。

「ね、ねこちゃーん。どうしたのかなー。ミルクかな?それともお菓子が欲しいのかな?」

「ふっ。しらばっくれても無駄だよ。アンタの声を確かに覚えている。それにさっきアンタらが話している間に忍び込んで部屋を探したら縦に裂かれた黒マントがあったしね」

マギーは心なしか猫が笑った様に見えゾッとした。どうも見透かされているとふんだマギーは

「ちっ。どうもお前気に入らないね、アタシの言葉が分かるのかい?ま、そんなわけないし、そんなのどっちだっていいさ」

そう言いながら割烹着をゆっくり脱ぎ捨てた。そして鼻にかけた老眼鏡を外しハッピーの方を睨んだ。

「やろうってんなら覚悟しな。不意打でなければアタシのほうが強い、、解放、、、力を解放するっ!!!」

マギーは「はぁぁいゃぁぁ」と低い声で唸り力を溜める様なポーズをとった。それを見てハッピーは半歩後ろに後退し間合いをとった。

それを見た瞬時マギー「きょえぇぇぇ!!!」と超音波の様な声を出し駄菓子屋の中へ飛び込むそして周りの菓子棚を薙ぎ倒しながら奥の裏口へ一気に走り抜け「っしぁ!」と扉を蹴り開けそこから一目散に逃げていった。とてつもない速さだった。ハッピーは一歩も動けず暫くその場に固まった。そして数分後自ら緊張の糸を解きゆっくり下を向いた。そして小刻みに震え出した。

「あんのババァ、、次あったら髪の毛全部引っこ抜いてやる!」

ハッピーは悔しがったが次第に冷静になった。

「そうだ。こうしちゃいられないあの子達が危ない、神殿に向かわなくちゃ」

と自分に言い聞かせ北の森へと動き出した。

 

 

 

 

 

マイキーとドクロ団の秘密 12

エミコの祖母マギーは駄菓子屋を営んでいる。

軒先の「マギーの駄菓子屋」と書かれた暖簾が印象的で、これはエミコの父親がマギーにプレゼントしたものである。「ん?なんだいこのヒラヒラした変な布は。ん?手触り良し。ん?文字も良い。ん?店の軒先に。ん?ん?」と言いながらすぐに店に飾っていた。

エミコは暖簾をくぐり中へ入った。

「おばあちゃーん」

マイキーとコリンも後に続いて中に入り呼んでみる。

「おばあちゃーん」

やっぱり居ないか、、と思い表に出ようとしたその時。

「誰がクソババァだいこのちんちくりんが!」と棚の影から人が飛び出しオモチャの日本刀でコリンの頭をぶっ叩いた。

「きゅー」

コリンは喉を締めた様な音を鳴らし白目を剥いている。

「おばあちゃん!!」

エミコは驚いて大きな声をだした。

「おぉ〜エミコよく来たね。どうしたんだい驚いたりして」

エミコは思わずマギーに抱きつき、きつくハグした。

「あいたた。エミコどうしたんだい落ち着きな、何かあったのかい?」

エミコはマギーを離し今見てきた事などを順を追って伝えた。すると「くぁくぁくぁ」と独特な笑い声を出した。

「なるほど、事情は分かったけど大丈夫!みんな森の神殿に行ったんだよ。そうかアンタ達ちょうど町にいなかったんだね」

「神殿に?収穫祭はまだひと月先だよ?」

エミコよりはやくマイキーが質問した。

「いやー。町長から急に連絡が回って来て何でも神殿の屋根の一部が壊れているから急いで直さないといけないとの事さ。神様の事だからね。早急に対処しないと」

「そうか、それで町中の人が手伝いに行ったんだね」

コリンは頭を押さえながら言った。人がいた嬉しさと事情が分かった安心で頭の痛みも何処かへ飛んだ様だ。

「そう。そうだよ。以外と話がわかるじぁないか。さっきババァって言ったのは忘れてやるよくぁくぁ」

コリンは言ってないよーと心の中で言った。

「アンタ達も行ってみたらどうだい、きっと皆んなそこにいるよアタシァちょっと足が痛いもんで此処にいるけどね」

「おばあちゃんどうしたの?足」

エミコが心配そうに足を覗き込むと右足首に包帯が巻かれていた。

「いや大した事じゃないよ。ちょっと転んでね、、」

エミコ達は早速神殿に行く事に決め、じぁあ行って来るねとマギーの駄菓子屋を後にした。マギーは見送った後「ふう。足が痛いね。まったく、。」と足を引きずりながら店の奥へ引っ込もうとした。その時、、

屋根から何かが降ってきた。

「まちな」

それは猫のハッピーだった。