窓から林檎の木を眺めていたなら

Chapter 03

駅前通りはいつも人通りが多かった。立ち並ぶ店も活気があって、こころなしか建物自体がふんぞりかえっているようにさえ見えた。
そこにフラフラと片手に小さな紙切れを握りしめずっと俯いたまま歩く男があった。髪は無惨に伸び薄汚れた袋を引きずる姿は所謂ホームレスそのものであった。「ああ、あったあった。」男は地面にしゃがみ何かを拾い上げた。
それは先程手に入れた紙に書かれた番号に電話をかけるためのお金であった。彼は駅の前に並んだ公衆電話へ行き小銭を入れ番号をプッシュした。
 トゥルルルルル。トゥルルルル。ガチャ。「はぁいこちらTim’s storeそちらはどなたー」「ああ。やあ。Hi。あの、、、いや、、、その、、、」
「なぁんだよイタズラならきるよ。」
「いや違うんだ、僕はあの、実はメモを拾って、それで、この番号が書いてあって、それでかけたんだ。(最近人と話してないから口がまわらんな、、、)」
「え?あ。あぁぁそおー!いや。ん”ん”〜。ah。アー。」ひとつ咳払いをしてさらに続けた。
「よくぞこの悪魔宇宙の中、赤き奇跡を発見されました。貴方は光の運命を手に入れた太陽的稀有な存在です。おめでとうございます。今から貴方に神の鳥宇宙様から報奨金が贈られます。つきましては3丁目のかどの煙草屋Tim’s storeへお越しください。代理人ティムがご案内いたします。誠におめでとうございます宇宙。(さっきスーツのヤロウの後すぐコイツがきたのか、メモ用紙を見つけた瞬間を見逃したのは残念だが仕方ない。コイツを最後まで騙しきってやるヒヒ)」
ホームレスの男はティムの話が終わるとこう言った。
「あの、、、じつはさ、あの紙は俺が置いたんだ」
受話器の向こうで沈黙が耳をつんざいた。