窓から林檎の木を眺めていたなら

Chapter 04

世界は運命で渦巻いている。奇跡の様に感じるものから日常におこる小さなものまで、字の如く渦を巻きながら一つの運命が次の運命へと繋がっていき、世界を覆っているのである。
 ティムは自分の耳を疑った。あのメモをコイツが置いた? ?。なにを言ってやがるんだあの紙はオレが置いて、そして此処から見張っていたんだ。ははーんそうか、頭のおかしいヤロウがたまたま見つけ電話をかけてきやがったのか。まったくオレの運命ってやつはついてないよ。イタズラひとつまっとうできやしねえ!彼は自分の運命を呪ったが、実はそうではなかった。むしろ稀に神さまの気まぐれで起こる様な奇跡的運命を彼は目の当たりにしているのであった。
「いや言い方が悪かったな」
ホームレスの男が続けた。
「昔、といっても五年ほど前だが君はこのメモと同じようなものを何処かで見たんじゃないか?」
ティムの背筋がピンと伸びた。
「そのメモなんだ。俺が置いたと言ったのは。」
沈黙。1,2,3,・・・きっかり10秒。ティムの過去と現在がこの時しっかりと手を結び互いを引き寄せた。5年前、たしかにティムは同じ様な文面の紙を拾っていた。その時彼は、まさかとは思いつつも淡い期待を抱き電話をかけていた。結局呼び鈴だけが永遠に木霊し誰にも繋がらななかったので彼はひどくがっかりし、また何処かで誰かが嘲笑っていると思うと無性に腹がたった。そして現在何かと失敗続きだった彼は、ふとあのメモの事を思い出し、腹いせに誰かを騙してやろうと思いたったのであった。この事実を知ったティムとホームレスの男。この二人の数奇な運命はもう少し続くのであった。