窓から林檎の木を眺めていたなら

Chapter 05

午後3:26 11秒,12,13,14,,,,,,煙草屋の中。客は誰もおらず壁に掛かったヤンキースのロゴの入った時計の音が店内に響いていた。店主のティムもホームレスの男も黙っている。受話器を伝い互いの緊張だけが会話していた。
 先に口火を切ったのはホームレスの男だった。
「すまない」
緊張が緩み二人の時間も進み出す。男は続けた。
「俺はあの時会社を経営していて、、そう何か面白い事をしようと躍起になっていた。それで、世界中にメッセージを置いたんだ。そしてその中の1つを君が見つけたってわけなんだ」
あまりに突飛な話にティムは夢の中にいる様な錯覚を受けた。何か言わなくては言わなくては、と思い詰め出た言葉は、「なんで?」だった。今起こっているあらゆる出来事に対し発した心の叫びだった。
「何故か、、そうだな、君には説明しなくてはならないな。今公衆電話なんだ、もう小銭がきれる。会って話そう」
ここまで来て引き返す事など到底できない。ティムは自分の店の場所を教え、二人は出会う。そして、互いの運命の歯車が、そう一流の職人が作ったそれかの様にピッタリと噛み合い
ゆっくり、しかし力強く回り始めた。