窓から林檎の木を眺めていたなら

Chapter06-2

(前回のあらすじ。ティムはホームレスの男と話す。打ち解け始めた二人の心。そこに常連客がやって来て男に話かけた。)
 男は老婆の視線に射抜かれて少し緊張した。がそれも束の間、老婆の目を見てみるととても優しい光を放っていた。店に入って来た時のティムとの会話から攻撃的な態度を想像していたので、その表情を見て男は肩の力を抜いた。
「マダム、俺は見ての通りどこの誰でもないよ。ティムとはさっき知り合ったばかりで、俺の他愛もない話を聞いてもらっていたのさ」
「そうかい、あたしゃてっきりどこかの偉い人が訪ねて来たと思ったがね。違ったかい」
二人の目が合い老婆はニヤリと笑みを浮かべた。
「さ、あたしはもう帰るよ晩御飯の支度しなくちゃ。ああそうだ、あんたこれお食べ」
老婆は肩から下げたバッグの中から真っ赤なリンゴを取り出し男に手渡した。その時、男は自分の精神が急速に浄化されるのを感じた。
生命の輝きに触れ運命の瞬きに触れ、彼の靄がかった視界が一気に澄み渡った。

この物語はここで終わり、ジ・エンドである。この後彼らは新たに会社を立ち上げ大成功を収めるが、それはまた別の運命の話、、、、。

 

「ああそうだ、まだ名前を聞いてなかったな、あんた名前は?」

 

「スティーブ。スティーブ・ジョブズだ」

 

END